朝菱香果園

"売るのが惜しい"と思えるような ブドウを届けたい
—朝菱香果園 大内田豊年


 福岡県内の某スーパーに設けられている産直(生産者直送)コーナー。40代と思われる男性買い物客がブドウを品定めし、同じ生産者が育てたブドウを1つ、また1つと立て続けに買い物カゴに入れていきます。カゴに入れられたブドウは全部で3つ。その様子に興味を引かれ、声をかけてみました。

「ブドウがお好きなんですね」

「我が家はみんな果物が好きでしてね。特にブドウが大好き。時期になると、たっぷりと大皿に盛って食べますよ。ほら、このブドウはとても美味しいんですよ」

「豪華な食べ方ですね。ところで、ブドウの良し悪しはどこで見分けているんですか?」

「ここのブドウはまんべんなく色づいていて、他のブドウと比べて色が濃い。ちゃんと熟れている状態です。それに茎の部分が青いでしょう。鮮度が良い証拠です」

 最近の消費者は、青果物についてずいぶん詳しくなったと感じます。この目の肥えた男性客が購入したブドウは、朝菱香果園(朝倉市菱野)の農園主・大内田豊年さんが育てたもの。大内田さんは高校卒業後、父の優平さんが営む果樹園に就農。以来、約30年間、巨峰、ピオーネなどの栽培に取り組んでいます。

ブドウの剪定をする大内田さん
朝倉市の中山間地にてブドウの栽培を行う大内田さん
実が大きくなる前の赤ちゃんブドウ
実が大きくなる前の"赤ちゃんブドウ"

 ブドウの販売は個人宅配が中心ですが、昨年より一部のスーパーの要望に応え、出荷をスタートしました。

「美味しいブドウづくりには、土づくりや選定など色いろコツがあります。ですが、30年間、農業を続けてきて、土地に適した作物であればだいたい良いものができる、と分かりました。その土地の力を借り、なるべく手をかけずに“自然の力を活かす”のが大事だと考えています」

 その上で、市場の動向や時代の先を見据えた効果的な農法など、新しい情報を柔軟に取り入れながら農業を行っています。現在、微生物を活かした有機質肥料でのブドウ栽培に取り組み、果樹園に散布する微生物の液肥を作っているほか、新品種の栽培も進行中で、販売に向けた準備を行っています。

微生物を活かした有機質肥料(液肥)
微生物を活かした有機質肥料(液肥)での栽培に取り組んでいます

 そんな大内田さんにブドウづくりの面白さについて伺うと、間髪入れずに答えが返ってきました。

「売るのが惜しい! と思えるくらいきれいなブドウが出来たときは本当にうれしいですね。そして、そのブドウを食べたお客さんが喜んでくれると、最高にうれしいです」

 朝菱香果園では、ブドウを発送するタイミングにも心を配り、粒の色がしっかりと濃く甘味がのった状態で出荷を行っています。

「ブドウには表面と裏面があるのですが、どちらから見ても美しく、粒の大きい重量感のある立派なブドウをお届けしたいですね」

 しかし、工業製品とは違って自然が相手の農業は苦労がつきもの。一度の台風ですべてが台無しになってしまう場合もあると言います。しかし、大内田さんはある一つの信念で農業に向き合っています。

「はっきり言うと、農業は他の職業に比べて儲かる仕事ではありません。しかし、生きていく上では食べる行為は欠かせません。格好良く聞こえてしまうかもしれませんが、食料の生産は、誰かがやらなければいけない仕事なのです。もちろん自分のためでもありますが、農業は人のためになる仕事なんです」

 こう農業に携わる誇りを語る大内田さん。地元の寄り合いや酒の席などでは、こういった話に花が咲くといいます。また、年配の生産者も、同じ生産者として平等に接してくれるため気づきも多いとか。

ブドウの剪定をする大内田さん
小高い山の上にある大内田さんのブドウ畑

 最後に、「これは農業をやらないと分からないかもしれませんが――」と前置きし、語った言葉が印象的でした。

「農業を通じて、土の神さま、水の神さまの恩恵を受けていると感じますね」

 自然の恩恵に感謝しながら謙虚に生き、誇りを持って農業に勤しむ大内田さん。古き良き美風が息づく朝倉の山間地で育ったブドウを、ぜひ手に取ってみて下さい。


農園情報

出荷依頼 : 双方、相談の上

主要品目 : 巨峰、ピオーネ

出荷期間 :

味の特徴 : 各品種の特徴がよく出ており、甘味、舌触り、喉越しのバランスが良い。口に入れたときの皮離れもよい

お薦めの食べ方 : 生食が一番。丁寧に皮をむき、野菜と共に包んだエスニック風の生春巻きも美味しい

セールスポイント : 自然のチカラを活かした農法(微生物を活かした有機質肥料)で育てている。出荷のタイミングにもこだわり、甘みがのった状態での配達を心がけている。

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